事業の多角化によって、レンタルスペースを活用した事業とレンタルスペースの貸し手である事業者が急速に増えています。
これから不動産事業で開業を検討している方の中には、「レンタルスペース」という事業に興味をお持ちの方も多いのではないでしょうか?
この記事では、レンタルスペースを開業するまでの流れと必要な費用について詳しく説明していますので、ぜひ最後までお読み下さい。
レンタルスペースとは?
レンタルスペースとは、事業者が定める利用目的や利用者の用途に合わせて、時間単位や半日・一日単位でスペースを貸し出しするサービスを言います。
ターゲットに合わせて、仕事の会議や作業スペース、パーティやイベント、ワークショップ、習い事教室、撮影スタジオなど、様々な利用目的に合わせたレンタルスペースがあります。
レンタルスペースを開業するために必要な届出、許可とは?
レンタルスペースの事業を開業する際、必要となる資格は特にありません。ですから、とても開業しやすい事業だと言えます。
ただし、事業を法人名義で行う場合は、法人の登記が必要になり、個人事業主であっても所轄の税務署に事業開始の届出を提出する必要があります。
そして、レンタルスペースで食事等のサービスを提供する場合、消防署や保健所の許可、食品衛生管理者の配置などが必要になります。食事等を提供しない場合でも、天井まで届くような高さのパーテーションで部屋を区切り、レンタルスペースとして運用する場合は、消防法に基づく手続きが必要になるケースがありますので、このような改装等を行う場合は、開業前に消防署に確認しながら進めるのが良いでしょう。
それ以外にも、例えば皆さん自身が事業または居住用として借りている物件の空きスペースを、レンタルスペースとして貸し出しする場合は、物件所有者(貸主)や管理会社の許可が必要になります。レンタルスペースは又貸し(転貸)契約となるため、契約書の内容によっては、物件所有者(貸主)から契約違反による損害賠償請求や立ち退き命令を受ける可能性もあります。
レンタルスペースの開業までの流れ

それではレンタルスペースを開業するための準備や運営までの流れを見ていきましょう。
1.コンセプト、利用目的の決定
まずは、どのようなレンタルスペースにするのかコンセプトを決めましょう。
コンセプトを決めるためのポイント
レンタルスペースのコンセプトを決めるためのポイントとして、以下のような点が挙げられます。
- ターゲット層(年齢層、性別)
- 用途・利用目的
- スタッフの配置(常駐、人数)
- 売上目標
用途・利用目的の例
様々な用途・利用目的のレンタルスペースがありますので、具体的な利用目的の例をいくつかご紹介します。
用途 | 具体的な利用目的の例 |
ビジネス | 貸し会議室 研修・セミナー会場 シェアオフィス コワーキングスペース レンタルオフィス |
レッスン・講座 | 語学教室 料理教室 ヨガ教室 ピラティススタジオ ダンス教室 パーソナルトレーニング ボイスレッスンスタジオ 絵画教室 |
パーティー・遊び | パーティー、女子会、懇親会 上映会、映画鑑賞会 スポーツ観戦 演劇会、演奏会 |
その他 | 撮影スタジオ 収納スペース |
コンセプト・利用目的の設定はとても重要です。このコンセプトに合わせて物件の条件、必要になる備品・消耗品、スタッフの配置などが変わります。
また、複数のコンセプトを同一の物件で実現することは、レイアウトの変更、備品の移動などに労力がかかってしまうため、できるだけ同じ系統の用途・利用目的を設定することをおすすめします。
2.物件の選定
レンタルスペースのコンセプトと提供するサービスが決まったら、そのサービスを提供するための物件を探すことになります。
レンタルスペースは、利便性から選ばれることが多いので、特に立地・アクセスは非常に重要です。また、レンタルスペースで提供するサービスの内容によっては、探す建物の用途が限定されてしまうことがあるため、不動産の情報サイトやアプリなどを使って効率的に、かつ根気よく探すことが大切です。
立地に関しては、ターゲット層がアクセスしやすい立地にあるのかどうかがポイントになります。例えば、ビジネス用途のレンタルスペースは、ビジネスマンが集うオフィス街にある方がアクセスがしやすいことになります。一方で、レッスン・講座を実施するためのレンタルスペースは、ビジネス街だけではなく、学校や住宅が多い地域の方が向いている場合があります。このように、ターゲットとする層が多い駅や地域で物件を絞り込みましょう。
そして、候補の物件が見つかった場合、必ず現地に行き、「駅からの距離と道のり」、「物件の状態(建物用途、面積、床・壁の厚さ)」、「物件の探しやすさ(看板の設置可否など)」、「近隣の環境」などを確認しましょう。
3.物件の契約

物件と周辺環境の確認が終わり、借りる場合は賃貸契約を、売買する場合は売買契約を交わすことになります。
物件の賃貸契約や売買契約では、保証金、礼金、仲介手数料、賃料の前払い分や購入費用、保険料など、多額の支払いを行うことになります。自己資金で開業する予定の場合は問題ありませんが、開業にあたり融資を受ける場合は、物件の選定と合わせて融資の手続きを進め、物件の契約時に支払いができるように進めることが重要です。
賃貸物件の場合は、特に「保証金の償却方法と期間」と「内装工事と原状復帰の費用」についても確認して契約を進めましょう。
4.内装工事
物件契約後、コンセプトに合わせた配管、電気配線、防音、冷暖房、照明、厨房、内装などの工事を手配することになります。
5.備品等の納入
内装工事が完了するタイミングに合わせて、備品等の納入を行うことになります。
レンタルスペースの用途や利用目的によって必要となる備品等が違うため、ここでは「ビジネス」、「レッスン(ダンススクール等)」、「パーティー」に分けて備品の例をご紹介します。
ビジネス(貸し会議室、レンタルオフィスなど)
貸し会議室やレンタルオフィスなどのビジネス用のレンタルスペースでは、パソコンを使用する業務やミーティング、企業説明会などに使用する備品を揃える必要があります。
【備品の例】
- デスク、オフィスチェア
- 会議用テーブル、チェア
- プロジェクター、スクリーン、モニター、ホワイトボード
- コピー機、プリンター
- 音響機器、マイク
- ウォーターサーバー、自動販売機
など
レッスン(ヨガ、ダンススクールなど)
ヨガ教室やダンススクールなどのレッスン用のレンタルスペースでは、レッスンに使用する機材、着替え、荷物を預けるための備品を揃える必要があります。
【備品の例】
- 鏡
- 音響機器
- ロッカー
- ベンチ、イス
- ウォーターサーバー、自動販売機
など
パーティーなど
パーティー用のレンタルスペースでは、キッチン関連の備品、談話やリラックスした時間を過ごすための備品などが必要になります。
【備品の例】
- 冷蔵庫、電子レンジ、オーブン
- 調理機器、調理器具、食器
- テーブル、イス、ソファ、ラグ
- 音響機器、カラオケ
- テレビ、モニター、ゲーム機
など
6.広告
レンタルスペースの集客では、自社のWEBサイトを作成することと合わせて、ポータルサイトを活用することをおすすめします。
レンタルスペースを借りたい人は、WEBで検索し、ポータルサイトにたどり着き、利用目的や価格、広さ、設備などの条件で絞り込み、レンタルスペースの予約をするケースが多いです。
ポータルサイトに登録することで、成果報酬型や掲載型などで手数料を支払うことになりますが、より多くの人の目に留まることになります。
それ以外にも、自社のWEBサイト、不動産のターゲットに合わせてSNSでの投稿や広告、折込チラシ、ポスティングなども利用するのが良いでしょう。
7.開業
ここまでご紹介したように準備を進め、実際に開業日を迎えることになります。
開業日の直前には、最終チェックとしてプレオープンで皆さん自身が利用してみて、良い点と悪い点、足りないものなどを把握しましょう。
レンタルスペースの開業資金と調達方法は?
レンタルスペースの開業に必要な費用として、物件関係費(保証金、礼金、仲介手数料、賃料前払・物件購入費用、保険料)、内装工事費、備品・消耗品の購入費、広告宣伝費などが挙げられます。
これらの開業に必要な費用は、皆さん自身で準備する「自己資金」と金融機関等からの「融資」を組み合わせて調達することになります。
新規事業者向けの融資は、日本政策金融公庫が有名ですが、それ以外の信用金庫・銀行などでも創業向けの融資制度がありますので、利息や返済期間などの条件を比較して借入先を選びましょう。
開業までの流れの中でも説明しましたが、融資を受けて資金調達をする場合は「物件の契約時まで」に融資が受けられることを確定させておく必要があります。金融機関への事前相談、必要書類の準備・提出などスケジュールには注意しましょう。
レンタルスペースは儲かるの?
レンタルスペースだから利益が出やすいということではなく、適切な料金設定をして、高い利用率で利用していただくことで、その結果、利益が出る事業になります。
まずは経費(固定費・変動費)と想定する利用率、確保したい利益から、1時間・1日あたりの料金を設定します。
レンタルスペースにスタッフは配置するの?
小規模から中規模のレンタルスペースは、無人で営業していることが多いようです。レンタルスペースは「場所を貸し出すサービス」なので、利用申込、代金決済、スマートロック、防犯カメラなどのシステムを導入することで、利用している時間帯に従業員を配置することはなく営業ができるようです。
ただし、利用中の緊急的な問い合わせや利用後の掃除などはスタッフが対応する必要があります。
一方、大規模なレンタルスペースの場合や、食事サービス・備品等の貸し出しサービスを行っている場合は、利用時間に合わせてスタッフを配置していることが多いようです。
利用率アップのためにはリピーターを増やす
そして、どのような利用目的のレンタルスペースでも、安定した利益を出すためには「リピーターを増やすこと」がとても大切です。
そのためには、『サービスの満足度』、定期的な利用等に対する『料金プラン・インセンティブの設定』、利用した人に忘れられないため・思い出してもらうための『継続的なコンタクト』といった視点での取り組みを行いましょう。
ポイント | 取り組みの具体例 |
サービスの満足度 | 申込から利用までスムーズな仕組み 備品等の充実 清潔感 スタッフの対応 |
料金プラン・インセンティブの設定 | 次回利用できる割引 定期的な利用に対する割引料金プラン |
継続的なコンタクト | メールマガジン LINEのお友達登録DM |
利益を出すためには、利用申込から請求・入金までを効率化する。
副業等でレンタルスペースを経営する場合は、労力をかけずに運営する方法を考えなくてはいけません。
レンタルスペースは、不特定多数の短期利用と、定期的なプランでの利用を管理することになります。受付業務や会員管理、請求業務、入金管理などは、システムを導入することで効率化を図ることができますので、ぜひ開業前に導入をご検討ください。
まとめ
レンタルスペースの開業までの流れと必要な準備、費用についてご紹介してきましたがいかがでしたか?
レンタルスペースを含めた「シェアリングビジネス」の市場は拡大傾向にあり、個人でも経営・運営しやすいレンタルスペースは注目を集めています。
この記事でご紹介した内容が、レンタルスペースの開業を検討している皆様のお役に立てば幸いです。
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