学習塾の開業までの流れと必要な費用とは?

コラム

少子化が進む状況においても多様な業態で注目を集めているのが教育ビジネスです。

学習塾の講師を経験した方や教育における知見がある方の中には、学習塾の開業を考えている方も多いのではないでしょうか。

そして、開業に向けて「開業準備はどうしたらいいの?」や「開業するための費用はどのくらい必要なの?」といった情報を調べているのではないでしょうか。

この記事では、学習塾の開業までの流れと必要な費用について、詳しく説明していますので、ぜひ最後までお読み下さい。

学習塾の市場規模

経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によると、学習塾の市場規模(売上高)は2004年の3,078億円から2021年には5,517億円まで成長しています。なかでも、2021年の増加率は過去10年間で最も高い水準となっていることからも、堅調な伸びを予測できる市場となっています。

※引用元:経済産業省 「特定サービス産業動態統計調査

売上高(百万円)伸び率(%)
2004年307,826
2005年327,2886.3
2006年346,7656.0
2007年356,1702.7
2008年366,9793.0
2009年368,4780.4
2010年374,7220.9
2011年384,2121.7
2012年405,8462.0
2013年404,075▲0.4
2014年404,5190.1
2015年431,7801.7
2016年435,9891.0
2017年441,5721.2
2018年444,3380.6
2019年448,7661.2
2020年470,293▲5.9
2021年551,7199.1

学習塾の種類・トレンド・傾向

それでは、学習塾の種類や最近のトレンド・傾向をご紹介しますので見ていきましょう。

学習塾の種類とは?

学習塾には、学習内容や学習の目的の違いによって、「進学塾」、「補習塾」、「専門塾(科目・学校・能力開発など)」、「自習指導塾」といった種類があります。また、指導方法の違いによって、「集団指導」と「個別指導」の違いも挙げられます。

進学塾とは?

進学塾とは、中学校、高校、大学などへの進学を目的とした受験対策・指導を行う塾を指します。

生徒が希望する学校に合わせたレベルの指導が求められるため、優秀な講師を集め、質の高い授業を提供できることが必要になります。

補習塾とは?

補習塾とは、学校の授業の理解を補うために、授業の復習や定期試験対策をサポートする塾を指します。

授業の復習や定期試験対策など、特定の学校に合わせた指導が求められるため、学校ごとの教材や授業の進捗を把握する必要はありますが、提供する授業の内容の難易度はそこまで高くないため講師を集めやすい形態だと言えます。

専門塾とは?

専門塾とは、「得意科目の強化」や「難関校への合格」など、何らかの目的に特化した塾を指します。大きくは、「科目特化型」、「学校(進学先)特化型」、「能力開発特化型」の3つの種類に分けられ、それぞれの分野について、指導経験や専門的な知識・資格のある講師を確保する必要があります。

  • 科目特化型:英語や数学、理科(物理・化学)など特定の科目に特化した塾
  • 学校特化型:志望する学校・学部の対策に特化した塾
  • 能力開発特化型:そろばんや英会話、速読など特化した内容の授業を提供している塾

自習指導塾とは?

自習指導塾とは、生徒自身が自習形式で勉強を進め、つまずいた際、その都度、講師が個別にサポートするスタイルの学習塾を指します。

カリキュラムに沿った授業を行わないため、マネジメント能力や幅広いコーチングの能力がある講師を確保する必要があります。

集団指導とは?

集団指導では、複数の生徒に対して講師が授業を行う指導方法を指します。

講師一人で複数人の生徒を指導できるため、効率的に授業を提供することができますが、生徒一人当たりの授業料を低く設定することが多く、予定している生徒数を確保できるかが課題になるでしょう。

個別指導とは?

個別指導では、講師一人が生徒一人(方針によっては1~5人ほど)に対して個別の指導を行う指導方法を指します。

集団指導と比較すると、生徒に対して講師を多く配置することになるため、授業料を高く設定することが多く、生徒・講師の両方を予定通り確保できるかが課題になるでしょう。

オンライン学習とは?

オンライン学習とは、インターネットを通じ、パソコン・タブレット・スマートフォンなどの端末を利用して受講する学習方法です。

受講者は、自宅などの好きな場所で好きな時間に受講することができ、また、新型コロナウイルスの影響からもオンライン学習塾の普及が進み、注目されています。

オンライン学習には、今行っている授業を配信するライブ方式、録画した授業を配信するオンデマンド方式があり、目的によって使い分けることになります。

オンライン学習を取り入れるメリット

学習塾でオンライン学習を取り入れるメリットとして以下のようなことが挙げられます。

  • 生徒が休んだ場合に、休んだ授業を自宅で受講できるので、生徒からのニーズがある。
  • 学習塾がない地域に住んでいる生徒でもインターネット環境があれば受講することができるので、学習塾のある地域以外からの生徒も獲得することができる。
  • オンデマンド方式の場合、授業の質を担保することができる。
  • 実際の授業の回数、講師の人数を減らすことができる。
  • 新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染予防ができる。

オンライン学習を取り入れるデメリット

メリットがたくさんあるオンライン学習ですが、デメリットもありますので把握しておきましょう。

  • 配信するための環境、受講者の管理、セキュリティ設定などが煩雑。
  • 配信するためのシステムの利用料金がかかる。
  • 生徒とコミュニケーションが取りづらい。生徒の反応がわかりづらい。
  • オンデマンド方式の場合、生徒から質問があった時間によっては、回答が遅くなってしまうケースがある。
  • 生徒の自宅の学習環境やインターネット環境によっては利用しづらいケースがある。

デジタル教材とは?

デジタル教材とは、パソコン・タブレット・スマートフォンなどの端末で利用できる教材を指します。

デジタル教材は、これまでの教材に拡大機能による文字の読みやすさ、音声読み上げ機能、アニメーションによる動きなどが加えられ、子どもの学習に対する興味や理解の促進につながることが特徴となっています。

また、問題を繰り返し解くことができる点、学習管理機能や復習が必要な問題だけを抽出する機能がある点など、効率的に学習を進めるうえでも必要な機能が備わっています。

一方で、子どもの視力低下につながる可能性やインターネットを通じて不適切な利用につながる可能性もあるため、使用に関する注意喚起が必要となるでしょう。

学習塾の開業から運営までの流れ

それでは学習塾を開業し、運営するまでの流れを見ていきましょう。

学習塾を開業するためには、特定の資格や特別な許可・認可は必要ありませんが、場所や備品、講師の採用などの準備、そして集客・受講や月謝の管理などが運営に必要になることを把握しておきましょう。

1.コンセプト、サービスの決定

学習塾の種類でも説明しましたが、ひと口に学習塾と言っても、進学塾、補習塾、専門塾、自習指導塾といった種類、集団指導、個別指導といった指導方法の種類から、皆様が開業する学習塾のコンセプト・サービスの内容を決定する必要があります。

コンセプト・サービスを決めるためのポイント

  • ターゲット層は何歳・何年生なのか?
  • 学習塾の種類(進学塾、補習塾、専門塾、自習指導塾)はどれにするのか?
  • 指導方法は、集団指導、個別指導のどちらにするのか?
  • 集団指導の場合、1授業あたりの設定人数は何人なのか?
  • 個別指導の場合、1授業(講師一人)あたり設定人数は何人なのか?
  • どの教材を使用するのか?
  • どのようなスケジュールで授業を行うのか?

2.物件の選定

サービスとどれくらいの規模感で実施する予定なのかが決まったら、次は物件の選定になります。

学習塾を成功させるためには、立地・場所は非常に重要な要素です。

質の高い授業を提供する学習塾であったとしても、アクセス・立地によっては全く生徒が集まらないということも考えられます。

また、物件の選定の段階で、その地域にどのような学校があり、どのようなニーズがあるのか(どのようなサービスが足りていない)、どのような進路希望を持つ生徒が多いのかといったことを把握しておきましょう。

テナント等の物件を選定するときのポイント

  • 駅・バス停から近いか?
  • 目立つ場所にあるか?
  • 看板などを設置できるか?
  • 家賃は適切な金額か?
  • 教室に必要な広さは確保できるか?
  • 駐輪場はあるか?
  • 競合となる学習塾の数が多くないか?

ご自宅で開業を検討している場合のポイント

ご自宅のリビングや1部屋を活用して開業を考えている方は、物件の選定は行いませんが、いくつか注意点がありますのでご紹介します。

  • 学習塾で利用するスペースとプライベートスペースが混同しないようにする。
  • 教室として必要な広さを確保する。
  • 氏名、住所等の個人情報が拡散される可能性があることを認識する。
  • ご近所の理解が必要になる。

3.物件の契約

※もしご自宅での開業を検討している場合は、こちらはスキップしてください。

物件が決まったら、契約を交わすことになります。

物件の契約時には、保証金、礼金、仲介手数料、賃料の前払い分、保険料など多額の支払いが発生します。そのため、開業資金の融資を受けることを検討している場合は、融資等が決定した後に物件の契約を行うことになります。

学習塾として使用する物件の契約時の留意点として、以下のようなポイントがありますので、契約時に内容を確認しておきましょう。

物件の契約時のポイント

  • 駅・バス停からの距離、道のり(坂・街灯)
  • テナントの用途(学習塾可)
  • 内装工事等の可否、原状復帰の範囲、費用
  • 保証金の償却方法、期間
  • 共用部分の設備

4.備品の納入

物件の手配またはご自宅でのスペース確保ができた後は、学習塾に必要な備品等を手配します。

学習塾の備品等の例

  • 生徒用のデスク、チェア(生徒数分)
  • 講師用のデスクとチェア(講師の人数分)
  • ブースデスク(ブースを設置する場合)
  • ホワイトボード
  • 書庫
  • パソコン、タブレット(授業で使用する場合は生徒の人数分)
  • コピー機、プリンター
  • 教材
  • パーテーション、面談用テーブル、イス

5.従業員の採用

開業する学習塾の規模によりますが、一定以上の規模の学習塾を開業する場合、講師や事務員などの従業員を雇用する必要があります。

専門性が高い授業を提供する場合、条件に合う講師がなかなか見つからないケースがありますので注意しましょう。

6.広告

開業時に生徒を集め、開業後の経営を安定させるためには広告がとても重要です。

ホームページを作成することはもちろん、交通機関の広告、チラシのポスティングなど依頼し、まずは「知ってもらうこと」に尽力しましょう。

特にチラシのポスティングは、学習塾の近隣住民に直接アプローチすることができるため、高い集客効果を期待できます。

また、無料体験や短期の集中講座など申し込みしやすい講座の実施、紹介割引・紹介特典といった生徒や生徒の保護者から口コミなどで伝わる施策などを合わせて実施すると集客に効果があるでしょう。

7.申込受付

広告やチラシなどを見て保護者から問い合わせを受け、契約に進むことになります。

契約時には、学習塾のコンセプトや方針、授業の内容、教材、スケジュール、月謝、退会時のルールなどを説明し、契約書やパンフレット、月謝の口座振替の申込用紙などの書類一式を渡します。

ここで渡す紙媒体の契約書や口座振替の申込用紙などは、保護者が必要事項を記入し、再度学習塾を訪問してもらうか、郵送していただくことになりますが、『会費ペイ』のようなWEB申込、WEB口座振替の申込ができるサービスを利用していると、保護者が書類を届けることに対する受付業務を効率化することができ、また、紙媒体の口座引落申込書に良くある印鑑相違・記入ミスによる書類のやり取り・連絡業務を削減することができます。

そして、学習塾側で効率化できていることは、保護者の負担も減らすことにもなります。

入会受付業務や会員管理、月謝の請求管理業務の効率化をお考えの方は、ぜひ『会費ペイ』の導入をご検討ください。

学習塾の開業資金と調達方法は?

学習塾の開業資金の内訳として、物件関係費(保証金、礼金、仲介手数料、賃料前払、保険料)、内装工事費、備品・消耗品の購入費、広告宣伝費、教材費、従業員の人件費などが必要になります。

開業資金は、自身で準備する「自己資金」と金融機関等から受ける「融資」を組み合わせて資金調達するケースが多いでしょう。

融資を受ける場合は、新規事業者向けの創業融資がある日本政策金融公庫が有名ですが、それ以外にも地域密着型の信用金庫、銀行などで創業者向けの融資制度を設けている場合がありますので、利息や返済条件などを比較して借入先を選びましょう。

学習塾をスモールスタートするためには?

学習塾を開業する際に「開業して生徒が集まるか不安がある」、「多額の借入金はしたくない」といった事情からスモールスタートを考えている方は多いのではないでしょうか。

学習塾をスモールスタートするポイントとして以下のようなことが挙げられます。

  • 自身が講師を行う。
  • 本業を持ちつつ、副業として時間帯・曜日を限定して行う。
  • 少人数の生徒を対象にする。
  • 自宅を活用する。または、レンタルスペースを活用する。
  • スタッフを雇用しないで、会費ペイなどのシステムを活用して業務効率化を図る。

スモールスタートしてから生徒数の増加に合わせて、場所の移転や従業員の雇用など、事業規模を拡張していく方法もありますので、ご自身の状況に合わせた規模で開業を目指しましょう。

まとめ

本記事では、学習塾の種類やトレンド、開業までの流れについてご紹介してきました。

少子化が進む中でも教育に掛ける金額が増加している状況であり、様々な特色を持っている学習塾が増えているので、教育ビジネスは魅力がある市場となっています。

本記事でご紹介した内容が、学習塾の開業を検討している皆様のお役に立てば幸いです。

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